2つの閾値【コラム】

『閾値』という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
ランニングする際、運動強度によって身体の変化が著しい地点を閾値と言い、心拍数などで表します。
この閾値を押さえてトレーニング強度を決めるとトレーニング効果は出やすいです。
今回はまず2つの閾値、無酸素作業閾値と有酸素性作業閾値のお話をしていきたいと思います。


目次


2つの閾値
ランニングの運動強度、ペースが上がると身体はそれに対応しよう血管を拡張させたりと変化をしますが、その際に現れるのが閾値になります。

無酸素性作業閾値、AT値とも言いますが、脂質と糖質から酸素を使ってランニングに必要なエネルギーを供給する有機的代謝では間に合わず、糖質を分解してエネルギー供給する無機的代謝でエネルギを多く賄い始めるポイントを言います。
そのため無機的代謝で産生される血中の乳酸が急激に増え始めるポイントでもあります。

有酸素性作業閾値、AeT値とも言いますが、ランニングし始め身体は運動に対応しようと変化しますが、ゆっくり走っていると酸素利用が増え有機的代謝が高くなるポイントを言います。
例外もありますが、有機的代謝が高くなるので脂質の利用が多いポイントとも言えます。


無酸素性作業閾値
無酸素性作業閾値やAT値といっても、ピンとこなかった方も多いかと思います。
測定に何を用いるかで呼び方決め方が変化するのですが、LT値やVT値などの方が聞き慣れているかもしれません。
LT値は乳酸値をもち入り、血中の乳酸濃度が4mmol/L(ミリモルパーリッター)蓄積する地点、VT値は換気量をもち入り、二酸化炭素の排出量、または換気量の増加している地点を言います。
決定方法は様々ありますが、筋肉のエネルギー消費に必要な酸素供給が追いつかなくなり、身体がそれに対応しようと著しく変化する地点をAT値と言います。
大体マラソンペースくらいの運動強度でややきつく感じるペースです。

トレーニングの指標としてもとても重要な数値でマラソンランナーの記録は以前説明したVO2MAXよりも相関関係が高いと言われています。
2人のランナーが同じVO2MAXだとしても、AT値がVO2MAXに対して低いランナーAと高いランナーBでは、疲労するポイントが違うので、ランナーBの方が高い運動強度を維持してマラソンを走れるということになります。

  VO2MAX AT値        
ランナーA

75 ml/kg/min

81VO2max

→→→ 乳酸の蓄積が早い →→→ 早く疲労する
ランナーB

75 ml/kg/min

85VO2max

→→→ 乳酸の蓄積が遅い →→→ 疲労しにくい

AT値を上げることはパフォーマンスアップにとても重要であると言えます。


有酸素性作業閾値
無酸素性作業閾値であるAT値などは調べたことがある人も多いかと思います。有酸素性作業閾値、AeT値はエネルギー経路がランニングに呼応して動き始め、換気量や血中乳酸濃度が上がるポイントです。血中乳酸濃度は2mmol/Lに到達するところでもあります。
運動をし始めると血管が拡張し、血流が増加、それに伴い換気量が増え血流は多くなります。すると身体の酸素利用が増え、有機的代謝が高くなります。
会話を楽しみながら走れるくらいの運動強度です。

もちろん例外もありますが、通常この有酸素性作業閾値付近は脂質代謝の比率が最も高くなるポイントです。
運動強度、走るペースが上がれば上がるほど糖質を使う無機的代謝の比率は高くなってきますが、走るペースが遅ければ脂質を使う有機的代謝の比率は高くなります。
酸素を使いエネルギーを産生する能力を養うにはとても重要なポイントです。


測定方法
VO2MAXの測定と同じように呼気ガス測定によって測ることができます。VO2MAXの測定はちょっと辛くはありますがw、測定方法によってはAT値やAeT値も出てくるので1回でいろんな情報を得ることができます。
乳酸値によって測定するには乳酸測定器を使用すると測れます。呼気ガス測定のほとんどは室内ですが(外でも測れますが、気温・風など測定環境を一定にする必要があります)、乳酸値ですと外でも測れます。乳酸値だとトレーニング中やトレーニング後にも測ることができるので、閾値との比較もしやすいと思います。

2つの閾値お分かりいただけましたでしょうか?
この2つの閾値を使ってトレーニングの運動強度を設定すると、闇雲にトレーニングするよりも効果が出やすいです。
次回は閾値を使ってどう運動強度を設定するかお伝えできればと思います!

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